2012年夏、ユーロ債務危機は進行し、南欧・高債務国の経済の悪化はユーロ圏中核国のドイツやフランスへも波及し始めました。
ドイツの2012年第2四半期(4-6月期)国内総生産(GDP)は前期比+0.3%と市場予想の+0.2%は上回るも前期の+0.5%からは伸び率が鈍化。前年比+1.0%は、景気後退(リセッション)となった2009年10-12月期以降、最低の伸びとなりました。
フランスの第2四半期GDPは前期比0.0%。ゼロ成長は3四半期連続となり、昨年の7-9月期に+0.3%となって以来、全く成長していない状態。
ユーロ圏全体の第2四半期GDPは前期比-0.2%、前年比-0.4%とマイナス成長に。2012年通期で欧州経済がリセッションに陥るのは確実と思われます。
このような状況のなか、ユーロは7月後半に安値を記録後は8月に入っても上昇が続き、欧州株も堅調推移が続いています。ドイツやフランスの株価指数は8月中旬時点で年初来高値圏に達し、渦中のスペインやイタリアの株価指数も7月末から上昇が続いています。
懸念されたスペイン・イタリアの10年債利回りも7月後半の高値圏からは随分と下落してきています。
欧州経済の悪化が進んでいるにも関わらず株価などが堅調に推移している理由は、ECBのドラギ総裁が9月のECB理事会で国債購入の詳細について発表するものと予想されるからに他なりません。
7月末のドラギ総裁の「必要なことは何でもする」発言以来、例え国債利回りが上昇しても、ECBが、ドラギ総裁がなんとかしてくれる、そんな期待で市場に安心感が広まっています。この期待感を含めたECBの国債購入政策が、通称「ドラギプット」と呼ばれます。
オプション取引のプットオプション(市場価格に関係なく予め決められた価格で売る権利を売買する取引)にちなんで、一種の保険のようなものをドラギ総裁に期待している、ということです。
米国での証券保有者の損失を限定する為の政策がFRBのバーナンキ議長にちなんで「バーナンキプット」と称されたことに対して、欧州では、
2011年12月と2012年2月に実施されたLTROのことを「ドラギプット」と呼んだことが始まりと思われます。LTROでも債券保有者の損失を限定するために利用するプットオプションと同様の効果をもたらしたと言われます。
さて、どれだけの規模のプットオプションを行使できるのか、9月6日のECB理事会、12日のドイツ憲法裁判所のESM合憲判決と欧州重要イベントが続く9月は市場の注目が高まります。
最終更新:2012年08月20日