金プラチナ短期相場観
ユーロ圏景気回復へ、イタリアへの警戒感も
更新日:2019年5月7日(火)
IHSマークイットが発表したユーロ圏4月の総合PMIは51.5。速報値の51.3からは上方修正も3月の51.6からは低下。好不況の節目50を上回る水準は続き、ユーロ圏経済は6年近く拡大基調が継続。ただし、5年半ぶり低水準となった1月の51.0から2月に51.9へと反発後は再び低迷状態となっています。
ドイツの総合PMIは5年9カ月ぶり低水準となった3月の51.4から4月は52.2へと反発(前月比+0.8)し、フランスも4年2カ月ぶり低水準となった1月の48.2からは反発の可能性を示す推移で4月は50.1(前月比+0.2)。いっぽう、イタリアは5年2カ月ぶり低水準となった1月の48.8を上回る水準での推移は続くものの3月の51.5から4月は49.5へと再び50割れへと低下(前月比-2.0)。スペインも10カ月ぶり高水準となった3月の55.4から4月は52.9へと7カ月ぶり低水準へと大幅低下(前月比-2.5)。アイルランドも2カ月連続の低下で53.4(前月比-0.7)となり、5年7カ月ぶり低水準となった1月の53.3に迫る水準へと軟化。
独仏の低水準での小反発ではユーロ圏の数値を押し上げるまでには至らなかった、という状態。
また、製造業PMIが3カ月連続の節目50割れで47ポイント台に低迷しているのに対し、サービス業PMIの直近3カ月は53前後の水準を維持。ただしそれ以前の50台半ば以上の水準から低下した状態。製造業の低迷をサービス業がカバーする構図も継続してはいるものの、その効果も弱まりつつあるような状態にも。
ロンドンの経済政策研究センターとイタリア中銀が共同算出するユーロ圏の経済動向を示す総合指標、ユーロコイン指数(Euro Coin:Euro Coincident Indicator)では、4月は0.18となって6カ月続落、2015年1月(0.16)以来4年3カ月ぶりの低水準となっています。
また、この指標のイタリア版、Ita-coin指数の4月は-0.36。8カ月続落で2013年7月(-0.36)以来、5年9カ月ぶりの低水準に落ち込んでいます。
イタリア国家統計局(ISTAT)が先日発表した第1四半期GDPは、前期比+0.2%、前年比+0.1%となり、リセッションからは脱却したことが示されていましたが、第2四半期スタート月の景気指標ではイタリアの低迷状態は続いているようです。
チャイナ・マネーに活路を求めて一帯一路で中国との覚書を交わしたイタリア、それ自体も批判の目にさらされるとともに、ユーロ圏の景気回復へ貢献していくのか、それとも足を引っ張るのか、イタリアの動向にも警戒感が高まります。
6日のNY金相場は+2.5ドル、0.2%の小幅続伸。トランプ米大統領の「中国からの輸入品への追加関税を10日に10%から25%へ引き上げ」ツイートを受けてリスク回避の流れとなった週明け。アジアの株式市場も米株先物なども大幅安、為替はドル高円高、米長期金利も2.5%を大きく割り込んでのスタートとなり、相対的に買われた時間外のNY金は1287ドル台、先週末から6ドル程度の上昇でこの日の高値。いつもの単なる警告ツイートとの楽観論と一応の警戒感とが交錯するなか、米中貿易協議中止の回避も伝えられ、リスク回避の巻き戻しが進行。400ドル超の大幅安となっていたNYダウが100ドル弱へと下げ幅を急縮小したNY市場では一時1280ドル割れへと全戻しとなる場面も。しかし、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表の対中関税引き上げ発言などもあり、週末の協議への警戒感もくすぶり、1280ドル台半ばへと値を戻して推移。1270ドルから1290ドルまでの保ち合いレンジ内では反発優勢の流れも、右肩下がりの20日移動平均線(1286.1)にも上値を押さえられた形。今週は米インフレ指標と米中協議の行方が主要テーマに。
NYプラチナは+6.1ドル、0.7%の続伸。週開け時間外は株安に連動する形で一時860ドル割れへと大幅安スタート。しかし米株の下げ幅縮小とともに切り返す展開となってNY朝には先週末水準を回復すると午後には880ドル台へ、NY引け後には880ドル台後半へと一段高。先週末に840ドル台の安値をつけての反発局面継続となった形も、水準としては右肩下がりに転じた20日移動平均線(892.3)まで距離を残す軟調地合い。目先はこの水準が攻防ラインとなり、突破できれば徐々に地合い回復で900ドル台の重要な抵抗水準との攻防にも。
ドル円は40銭弱のドル安円高で続落。トランプ発言を受けての急落スタートとなった週明け東京時間朝には110円半ばから80銭台まで戻りを試すも、戻り売り圧力が強まり110円20銭台まで下落。その後は財新の中国4月サービス業PMIが54.5と、1年3カ月ぶり高水準となったことなども好感されて反発。しかし、110円80銭台から90銭台までの水準では上値を押さえられる展開に。3月末以来の安値水準となって111円前後のサポート水準を割り込んだことにより、一段安への警戒感も高まる状態に。米中協議がまとまり、関税回避となればリスクオン地合いとなって111円台回復へと戻す展開も想定されるものの、そうならなければ円高優勢の流れで1月末安値108円台半ば辺りまでが当面の下値目安に。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場5/6終値とチャート
7日の国内金価格は連休前から-10円、0.2%の小幅安となって続落。波乱なく国内大型連休を終えるかとも思われた最終日朝のドル円急落により、大幅安への可能性もあったものの、円高の巻き戻しに伴い、4月24日につけた3カ月ぶり安値4899円と同水準にとどまって節目割れを回避。このまま下げ渋る状態を維持できれば4890円台から4930円までのレンジで方向感模索の展開にも。ただし、週末にかけて不透明は残り、円高リスクも継続。保ち合い下限を割り込めば下値模索の展開となり、1月末の急騰前の水準、4820円台辺りまでが当面の下値目安に。
プラチナ価格は-33円、0.97%安となり、連休前から5日続落。5日続落となるのは1月以来、4カ月ぶり。NYプラチナの急落が国内連休中だったことで大幅下落は回避も、連休最終日の円高によって中長期の節目水準3400円割れ。中長期の主要レンジを3000-3400円から3400-3800円へと上方シフトした状態は1カ月に満たず終了してしまった可能も。3400円割れが一時的にとどまれば上方シフト継続への可能性も残されるものの、目先は米中貿易協議の動向次第でリスク回避の流れが再開すれば円高とともにNYプラチナも売られやすくなることも想定され、下方シフトにも。当面の下値目安は3月末の急騰前の水準3280円近辺まで。
※参考:金プラチナ国内価格5/7とチャート
- 2019年5月7日(火)時点の相場
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国内金 : 4,899 円 5/7(火) ▼10(0.20%) 国内プラチナ : 3,373 円 5/7(火) ▼33(0.97%) NY金 : 1,283.8 ドル 5/6(月) ▲2.5(0.20%) NYプラチナ : 880.9 ドル 5/6(月) ▲6.1(0.70%) ドル円 : 110.72 円 5/6(月) ▼0.39(0.35%)
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