金プラチナ短期相場観
トリム平均PCEが示す「辛抱強さ」の理由
更新日:2019年5月23日(木)
FOMC議事要旨では、FF金利変更に対する「辛抱強さ」がしばらくは適切である、との見方が大勢となっていたことが示されました。
5月1日のFOMC後の会見でパウエルFRB議長が「低インフレは一過性の要因で抑制されている可能性」を指摘し、金融政策は「引き締めと緩和のどちらにも偏っていない」ことを裏付ける内容とも言えそうです。
市場で高まりつつある利下げ観測を背景にFOMCでも利下げの選択肢が議論の対象となったのかどうかが注目され、現状最もハト派のセントルイス連銀ブラード総裁はこの日、「インフレ率が今後も弱ければ利下げの可能性も」との発言もありましたが、FOMCではそこまでの議論はなかったようです。
FRBのインフレ判断基準となるコアPCEインフレは3月時点で前年比+1.55%。12月の+1.95%から3カ月連続の急低下となり、昨年7月(+2.04%)に6年ぶりの2%超えとなって以降は2%未達の状態が続きます。
これに対して、ダラス連銀が発表しているトリム平均PCEインフレ指数では、PCE指数の構成要素のうちで変動の激しい上位と下位20-30%程度を除いて算出され、この指数では4月は前年比+1.96%。1月には+1.88%まで低下しましたが、その前後を含めて2%近辺での推移が続いています。
一部の商品やサービス価格が低インフレ状態に陥っており、過去の推移からもコアPCEが低下しても、いずれトリム平均PCEの水準に追いついてくるだろう、との予想が「辛抱強さ」の理由にもなっているものと推測されます。
なお、パウエル議長がインフレ下押しの一時要因として挙げていた衣料や航空運賃などは、3月に前年比伸び率が大きく低下していましたが、航空運賃については4月に回復傾向、衣料は低迷継続の様相にもなっており、4月のコアPCEも急回復はまだ望めそうにはなさそうです。
コアPCEとトリム平均PCEとの乖離幅縮小に向けては、値下げの影響や低価格商品の普及などが一服するまで、もう少し「辛抱強さ」が必要にもなりそうです。
22日のNY金相場は+1.0ドル、0.08%の小反発。米政府がファーウェイ禁輸措置に加え、ビデオ監視機器関連の中国企業5社もブラックリスト入りを検討していることが伝えられ、米中対立悪化を懸念するリスク回避優勢に。株安とドル安の勢いが強まったNY朝に反発したNY金の上値は1277ドルまで、前日高値付近で上値を押さえられ、1280ドルラインに抵抗感も。NY引け後のFOMC議事要旨への警戒感もあり、元の水準1270ドル半ばへと行って来い。この日の変動値幅は上下5.1ドルにとどまり、今年の平均11.3ドルの半分以下、昨年6月22日(4.7ドル)以来11カ月ぶりの小動き。引き続き1270ドルのサポート水準を維持できるかどうかが目先のポイントに。
NYプラチナは-10.1ドル、1.24%の大幅反落。時間外での反発は820ドル手前で失速、米中摩擦激化への警戒感から戻り売り優勢の展開となって一段安、NY市場で810ドルを割れるとNY引け後には800ドル台前半へ。安値圏での十字線は反発へのサインとはならず、一段安を示唆していたことにも。2月14日(789.2)以来、3カ月ぶり安値水準となり、800ドルの大台ラインにサポートされないようだと今年安値780ドル台が意識されることにも。
ドル円は20銭のドル安円高。東京時間午前には株高・円安の流れで110円60銭台まで上昇したのがこの日の高値、前日高値付近で失速すると、米中対立激化を懸念してのリスク回避の円高基調に。2.4%台を回復していた米10年債利回りが再び2.4%割れへと急低下の展開となったこともドル円の重石に。FOMC議事要旨では、低インフレは一時的との見方を好感しての反発も110円20銭台から30銭台へと小幅にとどまり、今朝の東京市場では株安にも連れて戻り売り優勢の展開に。5月半ばから続いてきた反発基調は110円半ばの節目で一服、調整局面入りの様相に。ただし短期トレンドは好転、110円近辺ではサポートされやすく、110円半ばを上抜けできれば111円前後までは上値を伸ばすような展開にも。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場5/22終値とチャート
23日の国内金価格は-19円、0.39%の反落。前日の反発を帳消し、1月25日(4836)以来、4カ月ぶりの安値水準。2日前につけた安値4843円をわずかに下回り、一段安への警戒感も高まる状況に。このまま4840円を割れて下値模索の展開となれば4800円の大台から今年安値4797円近辺までが下値目安に。一時的な下振れにとどまり、4860円の戻り高値を超えることができれば短期トレンドも回復方向へ、4月末戻り高値4920円台辺りまでが次の上値目標にも。
プラチナ価格は-66円、2.12%の大幅反落。下落率では3月5日(-89円、2.7%)、4月10日(-78円、2.26%)に次いで今年3番目の大幅下落。16日ぶりに反発した前日の上げ幅の倍返しとなり、2月15日(3001)以来3カ月ぶりの安値水準、下値目安3040円近辺にも早々の到達。下げ止まりの可能性もあったNYプラチナが下げ止まらず、今朝の時間外ではさらに800ドルの大台割れを試すような展開にもなり、為替の円安基調も調整局面入りの様相。欧州時間以降に流れが大きく変わらなければ一段安の展開も、次なるサポート候補は3000円の大台ラインから今年安値圏、2990円近辺。
※参考:金プラチナ国内価格5/23とチャート
- 2019年5月23日(木)時点の相場
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国内金 : 4,841 円 5/23(木) ▼19(0.39%) 国内プラチナ : 3,047 円 5/23(木) ▼66(2.12%) NY金 : 1,274.2 ドル 5/22(水) ▲1.0(0.08%) NYプラチナ : 805.3 ドル 5/22(水) ▼10.1(1.24%) ドル円 : 110.32 円 5/22(水) ▼0.20(0.18%)
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