金プラチナ短期相場観
ウクライナ・イスラム・イラク・ガザ・エボラ
更新日:2014年8月9日(土)
ウクライナへのロシアの関与や欧米とロシアとの経済制裁合戦のエスカレートにより市場への緊張感も高まっていた8月序盤、昨日はイラクのイスラム過激派に対する空爆を米オバマ大統領が承認したことで地政学リスクへの警戒感が急激に高まることに。2011年末にイラクから完全撤退していた米軍は、イスラム過激派「イスラム国」によるイラク北部の制圧、勢力拡大阻止への対応と、オバマ大統領の威信回復をかけて空爆を開始。
これにより株安、債券高金利低下、円高、金上昇の典型的な地政学リスクに伴うリスク回避の流れが急速に進みましたが、ウクライナ関連では「ロシア政府がウクライナ紛争の緊張緩和に乗り出す意向」とも伝えられ、ウクライナとの国境付近で実施していた軍事演習の終了に伴い、リスク回避の巻き戻しの流れも。
米株は前日比1%前後の反発上昇となり、ユーロも対ドル対円ともに上昇へ、ドル円は急落分を全戻し、金も上昇分を帳消しと忙しい週末に。
ただし、パレスチナ自治区ガザではイスラエルとハマスの停戦延長合意に失敗し、双方の空爆再開へ。
目まぐるしく展開する中東界隈の地政学リスクへの警戒感も継続し、欧州株の下落傾向は止まらず、ドイツDAXは3週続落。米10年債金利の小幅反発に対して欧州の10年債金利低下は続き、ドイツ10年債金利は過去最低を更新する1.05%となり、6月16日の週から途中1週横ばいを挟んで8週間連続低下。
また、市場への影響は今のところはないものの、アフリカ西部で死者続出のエボラ出血熱に世界保健機関(WHO)は緊急事態宣言。ワクチンや治療薬がなく、致死率90%に至った時もあったとされ、過去最大の流行となっている今回の事態に各国の警戒感も高まります。
「不安定の弧」と呼ばれるエリアで継続的に頻発する地政学リスクなど、今年はそのエリアをやや拡大し、存在感を高めつつ、市場を脅かし続けます。
8日のNY市場、金相場は0.11%の小幅安。日中、リスク回避ムードが高まった時間帯には一時3週間ぶり高値となる1,324ドルまで上昇。その後リスク緩和の流れで反落も1,310ドル前後では底堅さを見せる展開。7月の短期下落トレンドは終息し、方向感はニュートラル状態。1,320ドルを上値抵抗線、1,280ドルをサポートラインとするレンジ内推移のなかで新たな短期トレンド模索へ。
週間ベースでは+17.4ドル(+1.35%)となり4週間ぶりの反発。
プラチナ相場も0.22%の小幅反落。上方向の節目1,490ドル台の少し下を右肩下がりに推移する21日移動平均線に上値を押さえられ、7月から続く短期下落トレンドからの脱出は成功せず。中期上昇トレンドを支える右肩上がりの90日移動平均線の1,460ドルから1,450ドル台辺りをサポートラインとするレンジを形成しつつも、下値余地1,440ドル近辺までの下落リスクもわずかに残る状況か。
週間では+15.0ドル(+1.03%)で4週ぶり反発。
ドル円は終値ベースでは3日連続102円10銭付近での横ばい推移。しかし米国のイラク空爆に関するオバマ大統領の声明が発表された10時半からリスク回避の流れが加速、日経平均の急落とともに急速な円高の流れ。101円50銭台まで下げて欧州時間以降はリスク緩和の流れで反発、元の水準へと収束。101円10銭台から102円80銭の広めのレンジ内で102円ちょうど付近がサポートライン化の兆し。
週間ベースでは-0.48円(-0.47%)となり、4週間ぶりの反落。週間値幅1.41円は4月7日の週以来。4カ月ぶりの値幅でボラティリティは少しづつ拡大傾向へ。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場8/8終値とチャート
- 2014年8月9日(土)時点の相場
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国内金 : 4,605 円 8/8(金) ▲9(0.20%) 国内プラチナ : 5,177 円 8/8(金) ▲35(0.68%) NY金 : 1,311.0 ドル 8/8(金) ▼1.5(0.11%) NYプラチナ : 1,478.3 ドル 8/8(金) ▼3.2(0.22%) ドル円 : 102.08 円 8/8(金) ▼0.01(0.01%)
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