金プラチナ短期相場観
ピークアウトの可能性を示す?ADSビジネス状況指数
更新日:2018年8月21日(火)
米国経済の先行指標となるソフトデータの代表格として注目されるISM製造業・非製造業景況指数は2017年後半から2018年前半にかけてピーク水準に達し、7月には製造業が58.1となって3カ月ぶりの水準に低下、非製造業は55.7と11カ月ぶりの低水準。減速への可能性も示す結果となっていました。
いっぽう、米国経済の実態を示すハードデータを集約する形で示されるADSビジネス状況指数も、近年は下値を切り上げながらも昨年後半からは上値も切り下げ、三角保ち合いの様相となってレンジを縮小し、急反落を警戒するような動きのようにも見えます。
フィラデルフィア連銀が発表するADSビジネス状況指数(Aruoba-Diebold-Scotti Business Conditions Index)は、高頻度で実際のビジネス状況を追跡するように設計され、季節調整済みの各種経済指標(週間失業保険請求、月次給与雇用、工業生産、個人所得、製造業と貿易収入、四半期実質GDPなど)から日々、算出されています。
調査対象の1960年3月以降の平均値を0とした指数で示され、異なる時代のビジネス状況を比較するためなどにも使用されます。
1990-91年の景気後退期にはADS指数は-1.89ポイント台まで低下し、2001年の景気後退期には-1.41ポイント台が最低水準となっていました。
これらに対し、リーマンショック後の世界金融危機の時、2009年1月には-4.0ポイント台まで急落し、最悪期の一つを形成したことを示しています。
なお、1974年には-4.5ポイント台の過去最悪期を形成していました。
リーマンショック以降では、2013年1月の-0.77台、2015年末の-0.76台が最低水準となり、現状はここからの回復基調が続いていることになります。
好調期の水準としては、リーマンショック後の反発期に記録した2010年5月の0.8ポイント台が最高水準であり、それ以降のピークは6ポイント前後までにとどまります。
昨年10月には0.65ポイント台まで上昇し、2010年5月以来、7年5カ月ぶりの高水準となっていました。
ADSビジネス状況指数では、リーマンショック以降で2番めの高水準を記録し、ピークアウトの可能性を示す状態のようにも見えます。
20日のNY金相場は+10.4ドル、0.88%の続伸。1190ドル台へと水準を切り上げてスタートした週明けは堅調に推移。欧州時間からはユーロドルの反発基調が再開し、ドル安の流れとなったことを受けてNY引け後には1190ドル台後半へ。トランプ米大統領がFRBの利上げ継続に対して「気に入らない」と発言したこともこの流れをサポート。アトランタ連銀のボスティック総裁も「年内はあと1回の利上げ」を予想とハト派発言も「FRBの独立性がとても重要」とチクリ。16日につけた1年7カ月ぶり安値からの自律反発が続くNY金の大台回復も時間の問題か。ただし、20日移動平均線(1214.3)と4月からの下落幅の23.6%戻し(1214.8)が戻り売りポイントとして上値を押さえられやすい水準に。下落トレンド脱却に向けてはこの水準突破が必要。
NYプラチナ相場は+16.6ドル、2.14%の大幅反発。16日つけた9年10カ月ぶり安値からの反発局面では、790ドルの水準が抵抗線となりつつあった状況で、週明けはこの水準でのもみ合い状態が続き、金の堅調推移に連れて若干水準を切り上げる形となって790ドル台後半へ。まだその勢いは乏しいものの流れは反発方向へと傾き始め、800ドルの大台ラインを突破して810ドル前後までが目先の上値目標水準に。下方向には770ドルが当面の安値サポートにもなりそうな状況に。ただしこれを再度割り込んだ場合には安値再更新も必至。
ドル円は48銭のドル安円高となって続落。110円台半ばでの保ち合い状態から、欧州時間以降は軟調推移の展開へ。トランプ米大統領のFRB利上げ批判に加え、対中貿易協議に対しても期待していないなどの否定的発言がドル安基調を後押し。米10年債利回りも5月末以来ほぼ3カ月ぶりとなる2.81%台まで低下し、ドルインデックスも96ポイント台を割れて今朝には95ポイント台前半へ。ドル円も2カ月ぶりのドル安円高水準となり、今朝の東京市場では110円を割リ込み一時6月末以来の200日移動平均線(109.88)割れも。110円台半ばの水準を割り込んだことによるドル安円高基調が加速し始めた形となり、6月末安値圏109円台前半までを下値目安に一段安の展開にも。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場8/20終値とチャート
21日の国内金価格はわずかに+1円、小幅に3日続伸。3日続伸となるのは7月6日以来、1カ月半ぶり。上昇日の次は続落、といった流れが続いてきた急落局面からの脱却を示唆する可能性もある値動きに。7月後半以降は戻り高値を一度も超えられない状態が続いてきただけに、本格的な流れ反転に向けてはそれがポイントに。ただし直近の戻り高値4582円にはまだ距離を残し、まずはその手前で抵抗線となりうる9日移動平均線(4557)上抜けが課題に。
プラチナ価格は+5円、0.17%の小幅高で3日続伸。3日合計104円の上昇幅は16日の下落幅162円の64%にとどまり、反落を警戒する値動きにも。NYプラチナが810ドルまで上昇した場合には戻り高値3073円近辺に到達する可能性もあるものの、円高圧力がやや強まっていることが相殺要因に。目先は9日移動平均線(3062)から戻り高値3073円までの水準が抵抗帯として作用しそうな状況でもあり、この水準を突破できれば年初来下落幅の23.6%戻し(3131)から21日移動平均(3133)までが次の上値目標に。
※参考:金プラチナ国内価格8/21とチャート
- 2018年8月21日(火)時点の相場
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国内金 : 4,514 円 8/21(火) ▲1(0.02%) 国内プラチナ : 3,015 円 8/21(火) ▲5(0.17%) NY金 : 1,194.6 ドル 8/20(月) ▲10.4(0.88%) NYプラチナ : 793.9 ドル 8/20(月) ▲16.6(2.14%) ドル円 : 110.03 円 8/20(月) ▼0.48(0.43%)
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