金プラチナ短期相場観
ワクチン開発進展も米雇用とインフレの回復は進まず
更新日:2020年11月26日(木)
ワクチン開発が進展し、年内にも接種開始が現実的となるなか、ポスト・コロナが意識され、景気回復基調加速への期待感も高まり、さらにその先を行く株式市場では過去最高値更新も続きます。
しかし、新規失業保険申請件数は2週連続の増加となり、コロナ前の最大水準69.5万件手前、70万件台での足踏み状態が続き、ここに来て米雇用市場の回復も失速気味。そしてインフレ上昇の兆しもなかなか見られません。
米商務省が発表した10月の個人消費支出物価指数(PCE)は前年比+1.18%となって9月の+1.38%から低下、3ヵ月ぶりの低水準。食品とエネルギー関連を除くコアPCEは前年比+1.41%となり、9月の+1.56%から低下、これも3ヵ月ぶり低水準。4月以降のインフレ上昇傾向は、ここに来て急失速。
上下の一定割合を除外して算出する、ダラス連銀のトリム平均PCEでは前年比+1.71%。2017年9月(1.71)以来、3年1ヵ月ぶりの低水準。3月に2%を割れて以降は徐々に低下傾向、足下では続落となって9月の+1.84%からはやや低下幅も拡大。
価格変動分布の中央部分を対象に算出する、クリーブランド連銀のメディアンPCEでは前年比+2.18%。2018年1月(2.15)以来、1年9ヵ月ぶりの低水準。+2.5%前後での推移は夏場に崩れ、6月からは5ヵ月続落。
シカゴ連銀のエバンズ総裁は今週、「ワクチンが迅速かつ全体に」展開されれば景気回復ペースは加速するだろうとしながらも、「インフレ率が2%に達するのは22年後半か23年」になるだろうとの見通しを示し、「コアインフレ率を2.5%まで引き上げるべき」との見解も。
そして、「23年より前の利上げを見込んでいない」、利上げについては「23年後半か24年」になるだろうとの予想も。
ハト派のイエレン財務長官にパウエルFRB議長、ブレイナード次期FRB議長、という組み合わせになれば、緩和的な政策も比較的長く続きやすくなりそうです。
25日のNY金相場は+0.9ドル、0.05%の小幅高で3日ぶりの反発。感謝祭前に節目の3万ドル到達による達成感から利益確定売りとなったダウに対して、節目の1800ドル到達のNY金は利益確定の買い戻しと自律反発も極めて限定的に。時間外は1800ドル台での小康状態から、一時わずかに1800ドル割れも前日安値は下回らず、ロンドン市場にかけての反発局面では1816ドルまで、NY市場では再び1810ドル割れへと軟調推移。ゆるやかな上昇軌道を維持する200日移動平均線(1801.3)に支えられて下げ渋っただけ、という状態にも。急落後の十字線で反発への可能性を示唆するとともに、上ヒゲ長めで売り圧力も残り、売り買い交錯模様。月末月初に向けては米経済指標結果に素直に反応するような展開にも。反発方向には1850ドルの節目が当面の抵抗線となる可能性、下方向には3月安値から8月最高値までの半値戻し(1770.1)近辺が目先のサポート候補。
NYプラチナは+11.5ドル、1.2%の続伸。9月16日(973.5)以来、2ヵ月ぶりの高値。節目の960ドルを維持してスタートした時間外は970ドル台へと上値を伸ばすも、973ドル付近が上限となって何度も上値を押さえられると失速、ロンドン市場では950ドル付近まで急反落。しかしこれも一時的となって反発するとNY市場ではまたも970ドル台前半が上限に。960ドルの節目超えに伴う短期上値目標は9月高値圏980ドル近辺と控えめながら、感謝際前というタイミングもあってこの日の上値トライも970ドル台前半までとさらに控えめに。短期的には若干の上値余地を残し、930ドルが当面のサポート。金との逆行状態も継続し、価格差は835.7ドルまで縮小し、5月26日以来、半年ぶりの水準に。
ドル円は前日からほぼ変わらず104円40銭台での横ばい推移。東京時間につけた高値104円60銭近辺からNY市場での安値104円20銭台まで、揉み合いながらも軟調気味の推移となった後、NY終盤にかけてほぼ水平状態の20日移動平均線(104.47)まで戻す展開に。FOMC議事要旨では、資産購入に関するガイダンス強化が見込まれていることが示されたものの、市場で噂された12月の追加緩和について示唆するような内容はなく、今後のドル安圧力緩和につながる可能性も。引き続き下方向には103円70銭台のサポートを104円付近に引き上げようかという状態に、上方向には105円半ばの抵抗水準を104円台後半へと切り下げようか、という状態にも。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場11/25終値とチャート
26日の国内金価格は-8円、0.12%の小幅安で6日続落。6日続落は昨年4月以来、1年7ヵ月ぶり。6日合計では-314円、-4.52%となり、2015年7月(7日続落、-267円、-5.42%)以来、5年4ヵ月ぶりの急落。今年に限ればコロナショックの時の3月2日には1日で-293円(4.64%)、最高値後の急反落局面となった8月12日にも1日で-353円(4.67%)となっており、3大急落局面を形成。今朝の東京市場での円高が影響した様子も。目先は感謝際から週末モードでNY金の動意低下も想定され、NY金には下げ止まり感も。ただし為替はユーロ高ドル安傾向、金とユーロドルとの相関性は解消状態にあり、ドル安でも金安という流れもあり。水準的には夏場の急騰前の高値、5月高値圏6600円近辺がサポート候補に。
プラチナ価格は+21円、0.61%の続伸。9月17日(3531)以来2ヵ月ぶり高値圏での一段高。NYプラチナが短期上値目標に若干届かなかったことと今朝の円高が影響し、想定された行き過ぎ水準3500円の大台には少し届かず。短期的には上値トライ一服となりやすい状況も、流れとしては緩やかに上昇する90日移動平均線(3340)を9日移動平均線(3370)が上抜け、21日移動平均線(3275)も下から追随する状態となり、堅調推移がもう少し続きそうな状況にも。
金との価格差は3135円となり、3月17日(3113)以来8ヵ月ぶりの水準で一段と縮小。
※参考:金プラチナ国内価格11/26とチャート
- 2020年11月26日(木)時点の相場
-
国内金 : 6,627 円 11/26(木) ▼8(0.12%) 国内プラチナ : 3,492 円 11/26(木) ▲21(0.61%) NY金 : 1,805.5 ドル 11/25(水) ▲0.9(0.05%) NYプラチナ : 969.8 ドル 11/25(水) ▲11.5(1.20%) ドル円 : 104.47 円 11/25(水) ▲0.01(0.01%)
1年余りで2855円上昇した国内金価格の調整目安は6600円前後? 11/27(金)
ワクチン開発進展も米雇用とインフレの回復は進まず 11/26(木)
NYプラチナ、今年安値からの上昇値幅では金を逆転 11/25(水)
11月PMI速報値は米欧で明暗、ドル高ユーロ安で金も急落 11/24(火)
年末に向け、米欧揃って消費センチメントも急失速 11/21(土)
PIVOT指数から見るNY金相場サポート&レジスタンスライン
PIVOT指数から見るNYプラチナ相場サポート&レジスタンスライン