金プラチナ短期相場観
中東の地政学リスク後退で金価格も利下げ期待も行って来い
更新日:2020年1月10日(金)
「戦争だけは避けたい」米国とイラン双方の思惑が一致し、事態のエスカレートを回避したことで中東での緊張感はいったん緩和。小競り合いのような事件は今後も発生する可能性は残りそうですが、双方首脳の本音も垣間見えたような状況にもなり、米株市場などは何事もなかったかのように再び過去最高値更新フェーズ入りの様相にも。
年明けに急騰していたFRBの利下げ期待も、リスク後退とともに再低下。
CMEフェドウォッチによれば、今年12月FOMCまでに25bps以上の利下げ1回以上を期待する割合は、11月末時点で60%、現状維持が36%、25bps以上の利上げ1回以上を予想する向きは3%の状態でした。
12月2日に発表された11月のISM製造業景況指数が予想外の低調となったことを受けて、今年1回の利下げ予想は74.2%へと跳ね上がり、据え置き予想は24.7%へと急低下。
その後は11月雇用統計の好結果、米中第1段階合意などを経て、1回の利下げと据え置き予想は50%付近に収束し、年末年始は均衡状態が続きました。
3日のイラン・ソレイマニ司令官殺害事件を発端に、1回の利下げ予想は63%へと再び急拡大、据え置き予想は33%へと急低下していましたが、8日のイランの報復攻撃後、米国の死傷者0人報道でリスク後退となり、トランプ大統領が軍事力行使を否定した頃には1回の利下げ予想は54%へ、据え置きは41%へと戻してきました。
地政学リスクで急騰した金価格が、リスク後退で全戻しとなるのと同様に、利下げ予想も急騰、急反落。金価格も利下げ期待も上方向への「行って来い」となっています。
それでも今年1回の利下げ期待50%以上を維持する状況が、金価格をサポートしています。
9日のNY金相場は-5.9ドル、0.38%安で続落。前日の米イラン緊張緩和を受けてリスク回避の巻き戻しが継続、株高と長期金利上昇、ドル高の流れが続き欧州早朝の時間帯には一時1541ドルまで下落。今回の軍事衝突懸念が急激に高まったイラン・ショックの発端となったイラン司令官殺害事件の日、3日安値(1530.4)以来の水準まで下げたことで一服感も。米株が再び過去最高値更新へとリスク選好の流れとなったNY市場では下げ渋って1550ドル台での揉み合い推移。11月安値1446.2ドルから8日高値1613.3ドルまでの38.2%戻し(1549.5)も達成したことで、いったん落ち着いた状態で雇用統計待ちへ。好結果となれば50%戻し(1529.8)から、サプライズがあれば61.8%戻し(1510.0)までの下押しも。ネガティブ方向なら23.6%戻し(1573.9)辺りまでの反発も。
NYプラチナは+8.2ドル、0.85%の反発。時間外では一時952.5ドルまで下落し、今年安値を更新、12月30日安値(951.9)以来、10日ぶりの安値。9月半ば以降の高値圏であり、抵抗水準となってきたこの950-60ドル近辺の水準にサポートされると、NY朝には970ドルを回復し、一時970ドル後半まで上昇。960ドルが目先のサポートとなり、990ドルまでの高値保ち合い形成の様相にもなり、雇用統計後には金に追随する展開にも。下方向に抜け出すことになれば940ドル近辺までが下値目安に、上方向には1010ドル付近までが目先の上限にも。
ドル円は40銭余りのドル高円安となって4日続伸。109円50銭台を回復し、12月26日(109.58)以来2週間ぶりのドル高円安水準。米株主要3指数が揃って過去最高値を更新し、ドイツDAXも2年ぶり高値、一時落ち込んでいた香港ハンセンも半年ぶり高値となるなど、世界同時株高の状態にもサポートされての堅調推移。短期的な流れも中立から上方向へと傾斜しつつある状態ながら、昨年11月末以降の高値圏にも相当する保ち合い上限ライン付近にも到達したことで、ここからは上値が重くなる水準。雇用統計での予想外の好結果などをきっかけにこの強めの抵抗水準を上抜けできれば1円程度の上昇は見込めそうな展開にも。下方向には109円ラインが当面のサポートとなる可能性も。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場1/9終値とチャート
10日の国内金価格は前日から変わらず横ばい推移。急上昇を続ける9日移動平均線が5868円まで水準を切り上げ、12月安値以降の上げ幅の38.2%戻し(5872)付近に到達。ほぼ、過去に経験したことのない高値水準での推移で拠り所のない状況のなか、5870円近辺は当面のサポート目安となる可能性も。ただ、NY金は急騰後の急反落で、ドル円は急落後の急反発でいずれもキリの良い水準まで戻してきたことで、雇用統計でサプライズがなければ比較的落ち着いた反応にとどまる可能性も。そうなると国内金価格のさらなる一段安への可能性は後退し、調整を時間で稼ぐ形となるような展開にもなり、23.6%戻し(5944)程度までの調整にとどまって新たに歴史的高値圏での保ち合い形成のような展開となる可能性も。
週間ベースでは+165円、2.85%の大幅上昇で6週続伸。週間上昇率としては2017年8月28日からの週(+154円、3.18%)以来、2年4カ月ぶりの急騰。
プラチナ価格は+53円、1.46%の反発。昨年高値を上回る水準での小幅保ち合いから上方向へと抜け出して今年高値を更新、2018年2月27日(3693)以来、1年10ヵ月半ぶりの高値水準に。短期上値目標として3720円台辺りまでの上昇余地も。ただし、雇用統計のポジティブ・サプライズなどで金が一段安となれば追随する可能性もあり、3630円のサポートを割り込んだ場合には12月の保ち合い下限付近、3540円近辺までが下値目安にも。
週間では+67円、1.85%の続伸。
※参考:金プラチナ国内価格1/10とチャート
- 2020年1月10日(金)時点の相場
-
国内金 : 5,955 円 1/10(金) +-0(0.00%) 国内プラチナ : 3,683 円 1/10(金) ▲53(1.46%) NY金 : 1,554.3 ドル 1/9(木) ▼5.9(0.38%) NYプラチナ : 972.0 ドル 1/9(木) ▲8.2(0.85%) ドル円 : 109.52 円 1/9(木) ▲0.42(0.38%)
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