金プラチナ短期相場観
米中対立、小売は米国、鉱工業生産は中国、回復基調は1勝1敗
更新日:2020年8月15日(土)
この日発表された中国の7月小売売上高は前年同月比-1.1%。市場予想の+0.1%程度を下回り、今年初の、コロナ後初のプラス圏回復に失敗。
中国の小売売上高は、昨年12月までは前年比+8.0%前後での推移が続いていました。年明けは春節の長期休暇があるために1-2月分を合算発表。今年はコロナ対策のロックダウンが1-2月にスタートし、この影響は2月分が最大となって前年比-20.5%。震源地、武漢のロックダウンが解除された4月には前年比-7.5%まで回復し、その後も回復傾向は続きますが、結果的に7月まで6ヵ月(実質7ヵ月)連続の前年割れ。
7月にはネット通販が前年比+10%超へと回復しているものの、逆に飲食業が前年比-10%超と低迷しているようです。
米国の7月小売売上高は、前年比では+2.74%。米国の場合は3月末にロックダウンに入り、4月にその影響は最大、前年比-19.86%となって中国のピーク水準と同等の落ち込み。ロックダウンが順次解除されていった5月以降には急速に回復し、6月には前年比プラス圏を回復。感染再拡大を懸念する面もありながらも6月以降、2ヵ月連続で前年比プラス圏。ただし、前年比での長期平均+4.19%には大きく及ばない水準にとどまります。
この日発表された中国の7月鉱工業生産は前年比+4.8%。6月からは横ばい、4月に前年比プラス圏を回復して以降、4ヵ月連続のプラス圏推移となっています。ただし、コロナ前の昨年12月は前年比+5.7%、2019年前半までは+6.0%前後での推移となっていました。7月時点では、自動車やスマホの生産が全体を牽引、海外需要が増加すればもう一段の伸びも、という状況に。
米国の7月鉱工業生産は、前年比では-8.18%。4月がボトムとなったのは小売売上高と同様ですが、その後の回復には遅れが目立ちます。そもそも米国の場合は昨年9月時点で前年割れへと落ち込み、それでもマイナス幅は1%未満の小幅前年割れの状態が今年2月まで続いていました。
鉱工業生産については、前年比プラス圏ながらも伸び悩みが続く中国に対して、前年割れが続きながらも着実に回復傾向が見られる米国、という構図になっています。
対立激化も懸念される米国と中国の消費と生産の回復基調は、ここまで1勝1敗というところでしょうか。
14日のNY金相場は-20.6ドル、1.05%の大幅安で3日ぶりの反落。前日の大幅上昇分を帳消しにして12日終値水準、1950ドル割れへと逆戻り。前日終値1970ドルがこの日の高値となり、ゆっくりと、コンスタントに戻り売りの展開。米追加経済対策を巡る与野党交渉は行き詰り、ゆるやかなドル安基調となり、ダウ以外の欧米株は軟調、米7月小売売上高が予想を下回る低調な結果となっても、前日まで大きく水準を切り上げてきた米10年債利回りがわずかな低下にとどまり、0.7%台での高止まり状態となったことも下押し圧力に。日足レベルではデッド・キャット・バウンスを警戒するチャート形状となり、戻り売り加速も警戒される状態にも。目先は1940ドル台から1970ドルまでの小幅揉み合いレンジ下限との攻防も意識され、これを割り込むようなら短期的には1920ドル付近までが下値目安に、戻り売りが加速、あるいは継続するような展開となった場合には3月安値から最高値までの38.2%戻し(1845.4)近辺までが意識される可能性も。逆に押し目買い再開となって1970ドル超へと反発できれば2000ドルの大台付近までが短期上値目標。
週間ベースでは-78.2ドル、3.86%安となり、10週ぶりの反落。
NYプラチナは-23.9ドル、2.43%の大幅反落。金と同様に前日の大幅上昇分を全戻し、時間外から軟調推移の展開も金に追随。NY朝には一時的に960ドルから980ドル台へと反発する場面もあったものの、戻り売り優勢となった流れを変えるには至らず、960ドル付近に戻して週末。7月後半以降、およそ1ヵ月に渡る保ち合いを形成する形にもなり、目先の上下の節目は980ドル台から950ドル台。下方向に抜け出せば7月末水準910ドル近辺までが下値目安、反発して上方ブレイクとなれば今年最高値1040ドル台が上値目標に。
週間ベースでは-11.3ドル、1.16%の反落。
ドル円は33銭のドル安円高、0.31%安となって6日ぶりの反落。東京朝の107円トライでは前日高値も意識され、107円10銭に届かず戻り売り圧力に屈した格好に。米10年債利回りが0.7%台で頭打ちとなって小幅に調整、ドル安の流れは続いてドルインデックスは8週続落となり、この日のドル円もジリ安の展開でNY時間にかけて106円40銭台へ。米追加経済対策協議の膠着状態は続いているものの、トランプ大統領がこの日、現金支給や家賃支援などの用意があることに言及したことでNY終盤にはダウの反発とともにドル円も反発し、106円60銭近辺を回復。日足レベルでは107円20銭近辺の上値目標にはわずかに届かず失速、90日移動平均線(107.11)にもギリギリかすりもせずに反落。目先は107円ラインがいったん上限となり、105円半ばまでの保ち合いレンジを形成。抵抗感の強い107円ラインを突破することができれば一段高の展開となって108円付近が次の上値目標にも。
週間ベースでは+67銭、0.63%の続伸。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場8/14終値とチャート
- 2020年8月15日(土)時点の相場
-
国内金 : 7,359 円 8/14(金) ▲107(1.48%) 国内プラチナ : 3,592 円 8/14(金) ▲94(2.69%) NY金 : 1,949.8 ドル 8/14(金) ▼20.6(1.05%) NYプラチナ : 959.1 ドル 8/14(金) ▼23.9(2.43%) ドル円 : 106.60 円 8/14(金) ▼0.33(0.31%)
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