金プラチナ短期相場観
EU対イタリア、ユーロコイン指数とイタコイン
更新日:2018年10月3日(水)
イタリアの連立与党「同盟」の有力議員とされる下院予算委員長クラウディオ・ボルギ氏が2日、「イタリアはユーロ圏を離脱すれば経済情勢は改善」すると発言したことなどがロイターの報道などで伝えられています。これを受けてイタリア10年債利回りは一時4年半ぶり高水準となる3.4%台半ばまで上昇、ユーロ売りも進行しました。(※後にボルギ氏は個人的見解であり、政府の意向ではないことを弁明)
この発言に対しては、イタリアのディマイオ副首相(五つ星運動党首)が「政府はEU及びユーロ圏からの離脱を望んでいない」との火消し発言も。
背景には、9月末にイタリア連立政権が2019年の財政赤字を対GDP比2.4%とすることで合意したことがあります。
対GDP比2.4%という数字は、EUで規制されているMAX3.0%を下回っており、規定上は一見問題がないようにも見えますが、実際にはこれまでのイタリア政権の計画の3倍に当たる水準ということで、EUサイドからは非難非難轟々。欧州委員会のユンケル委員長は「イタリアはEUとして合意している財政目標から逸脱している。イタリアでかつてのギリシャのような危機が発生するのは見たくない」などと真っ向批判しています。
イタリアのサルビーニ副首相(同盟党首)はEUに対し、予算案批判に伴うイタリア10年債利回り高騰による借り入れコスト上昇に対する損害賠償要求の可能性も示唆したようです。
しかし、イタリアの公的債務は既に累積で対GDP比133%に上っており、EU規制によれば公的債務削減の必要があるとの指摘もあります。
イタリア連立政権側の言い分としては、「財政赤字を対GDP比2.4%に拡大させる財政支出により消費が増え、1.6%の経済成長を達成可能」ということのようです。
これに対する否定的な見方として、「イタリアでは24才未満の失業率が8月時点で31%に上昇し、EU内最悪の比率」となっており、この対応政策としては生活保護しか準備されておらず、「新たな雇用が生み出されない限りは長期的な状況改善につながらない」ことが指摘されています。
今後の予定としては、15日までにイタリア予算案が提出され、EUサイド、欧州委員会は1週間以内に提出案がEU規制に適合しているかどうかを審査し、さらに1週間以内に予算案の修正を求める、という段取り。
イタリアのコンテ首相は、「ユーロは我々の通貨であり、決して放棄できるものではない」などの見解を示したとの報道もあるようですが、ディマイオ副首相(五つ星運動党首)は財政赤字の対GDP比2.4%の目標を「1ミリも変更しない」との強行発言も。
イタリアの財政問題を巡ってのEUとの対立の構図と市場のリスク要因となり得る状況は、向こう1カ月ほどは続くことになりそうです。
ロンドンの経済政策研究センターとイタリア中央銀行が発表し、鉱工業生産や景況感、物価、株価等も加味し、ユーロ圏の経済動向を包括的に示す指数、ユーロコイン指数(Euro Coin:Euro Coincident Indicator)は9月に0.52となり、1年9カ月ぶり低水準となった8月の0.47から反発し、年初からの急減速にも歯止めがかかり、下げ渋りの兆候となってきました。
一方、イタリア中銀が発表するユーロコイン指数のイタリア版、イタコイン(Ita-Coin)指数の9月は0.02。1年9カ月ぶり低水準となった7月の0.00から8月には0.04へと小反発後に再反落。好不況の節目0.00近辺の攻防で上げ渋りの兆候となっています。
2日のNY金相場は+15.3ドル、1.28%の大幅反発。イタリア財政問題懸念でユーロ売りドル買いが強まった欧州時間には一時1190ドル台前半へと売られる場面もあったものの、NY朝にはユーロの買い戻しをきっかけにNY金も買い戻し。1200ドルの大台回復で踏み上げ状態となった様子で1210ドル台へと急騰。またも50日移動平均線(1208.0)に上値を押さえられた格好にはなったものの、NY引け後にはこれを超えてジリ高推移の兆しも。流れが反転した可能性もあり、目先の上値目標は8月末の戻り高値1220ドル辺りまで。下方向には1190ドルが重要な節目となり、割れると下値トライ再開で今年安値が下値目安に。
NYプラチナ相場は+5.6ドル、0.68%の上昇で3日続伸。時間外には一時820ドル割れも、NY朝の反発局面では830ドルの節目超えとなって830ドル台後半まで急騰。しかし、一目均衡表の雲の上限(835.3)に上値を押さえられて失速。この水準を上抜けるか、830ドル超の水準を週末まで維持できるようなら上昇トレンド再加速の可能性も高まり、当面の上値目標は今年の下落幅の38.2%戻し(861.7)。水平状態となった50日移動平均線(810.1)が当面の強めの下値サポートにもなり、もし割り込んだ場合には今年安値圏770ドル台再トライの可能性も残される状況。
ドル円は30銭のドル安円高となって4日ぶりの反落。前日に何度もトライした114円台を維持できなかったことで、この日も東京朝に114円にワンタッチしただけで戻り売り圧力に屈した格好。イタリアの財政懸念に伴うユーロ売りドル高でもリスク回避の欧州株安とともに円高圧力もやや高まり、売り買い交錯の展開も上値と下値を徐々に切り下げる流れとなって今朝の東京市場では113円台半ば。週末にかけては雇用統計の賃金上昇率加速は予想されていないことから、ポジティブな結果となれば米長期金利上昇とドル高の勢い再燃でドル円も上値再トライへ。前年比+3.0%到達ならポジティブサプライズで114円再トライとなり、次の上値目標は昨年11月高値114円70銭台。予想通り低調なら調整局面継続も。調整目安としては2016年12月高値118円60銭台から今年安値104円60銭台までの61.8%戻しとなる113円30銭近辺から113円ラインまで。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場10/2終値とチャート
3日の国内金価格は+52円、1.11%の大幅高となって3日続伸。円安一服をNY金の大幅反発にカバーされ、7月20日(4744)以来2カ月半ぶりの高値水準。90日移動平均(4716)上抜けは6月15日以来3カ月半ぶり。4670円台から4680円の節目を上抜けたことで一気に水準を切り上げる形となり、4月高値から8月安値までの半値戻し(4724)を達成。短期上値目標4750円近辺までもう少しの上昇余地も。
プラチナ価格は+22円、0.68%高で3日続伸。7月13日(3265)以来2カ月半ぶりの高値水準での堅調推移。過熱感を高めながらも7月高値(3265)まであとわずかに迫り、今年の下げ幅の38.2%戻し(3267)達成と上値目標3270円近辺までもなんとか射程圏内に。
※参考:金プラチナ国内価格10/3とチャート
- 2018年10月3日(水)時点の相場
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国内金 : 4,725 円 10/3(水) ▲52(1.11%) 国内プラチナ : 3,258 円 10/3(水) ▲22(0.68%) NY金 : 1,207.0 ドル 10/2(火) ▲15.3(1.28%) NYプラチナ : 833.5 ドル 10/2(火) ▲5.6(0.68%) ドル円 : 113.68 円 10/2(火) ▼0.31(0.27%)
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