金プラチナ短期相場観
世界のプラチナ需給:2019年第2四半期
更新日:2019年9月10日(火)
WPIC(World Platinum Investment Council)が発表したプラチナ需給レポートによれば、2019年第2四半期のプラチナ鉱山産出量は世界全体で50.2トン。前期比+6.3%、前年比-2.1%で3四半期ぶりの高水準。
国別シェアでは南アフリカ:72.0%、ロシア:11.5%、ジンバブエ:7.1%、北米:6.5%、その他:2.8%。この割合に大きな変化はありません。
リサイクルによる15.4トンを加えて総供給量は65.6トン。総需要が58.8トンとなり、需給バランスは6.8トンの供給過多。
今年第1四半期にはETF急増により18.4トンもの供給不足となった以外では、2018年第2四半期以降は7~9トンの供給増が続きます。
需要面では、自動車触媒需要が23.8トンで前期比-1.3%、前年比-6.1%となり3四半期ぶりの低水準。
ジュエリー需要は17.3トンで第1四半期の17.4トンをわずかに下回って前期比-0.9%、前年比-5.1%で9四半期連続の前年割れ、少なくとも2015年以降では最低水準。
産業用需要は14.9トンで前期比-2%、前年比+1.1%で3四半期ぶり低水準。しかし2017年の13トン前後から最近では15トン前後へと緩やかな増加傾向で安定推移。
最も変動の大きい投資需要はETFが第1四半期の21.5トンの買い越しから売り越しに転じることなく第2四半期も0.9トンの買い越し。地金・コインなどの現物需要は1.9トンで前期比-20%。
半期ベースでは自動車触媒とジュエリー需要の低迷を投資需要がカバーする構図となっています。
この傾向は年後半にも継続するとの見込みから、2019年通年での総需要は2018年から9%増と予想されています。
なお、自動車触媒需要としては、パラジウム価格がプラチナ価格を500ドル超上回る状況となり、自動車触媒メーカーの負担が大きくなっているのに対し、パラジウムの80%以上がロシアのニッケルと南アフリカのプラチナの副産物として生産される為、ガソリン車用触媒としてのパラジウムの供給不足が続きます。この状況が続けば、価格が安いプラチナによる代替が本格化する可能性もありそうです。プラチナを使用する燃料電池車の台頭と合わせ、将来の自動車関連需要拡大の可能性も徐々に高まります。
プラチナ価格とその変動要因となるプラチナ消費需要の推移を見ると、ジュエリー需要は中国が世界の6割を占めていた2013年頃から、2018年には4割弱へと低下し、北米やインドなどなどがシェアを伸ばしつつありますが、中国での減少分を埋め切れず緩やかに減少傾向。現物投資需要は価格が下がれば増加傾向、上がれば減少傾向という特性があるものの、これは主にアジアでの傾向。シェア的にはマイナーながら欧米では価格上昇で買い需要が増加傾向。
ETF需要については、近年の価格低迷は2018年に底打ち感もあり、今年第1四半期に急増。その後も買い越し状態を維持し、第3四半期に入った現在も再び価格急騰局面を形成しており、第3四半期のプラチナ需要としても、欧米を中心にETFと現物投資需要が再び強まるかもしれません。
9日のNY金相場は-4.4ドル、0.29%安となって3日続落。リスク回避の巻き戻しの流れは週明けも継続し、為替では円安ドル安、米10年債利回りの反発基調も続きおよそ1カ月ぶりとなる1.64%台を回復。しかし、株価は強弱マチマチとその勢いには一服感も。下げ幅縮小のNY金はNY朝に一時1520ドル台を回復した後、1505ドル近辺まで下落し、下値目安1500ドル付近にもほぼ到達した状態に。何事もなければ1500ドルの大台割れは回避していったんは下げ止まる確率のほうが高そうにも見えるものの、大台を割り込んだ場合には昨年8月安値から今月高値までの23.6%戻し(1472.0)辺りまでが意識される可能性も。
NYプラチナは-5.8ドル、0.61%安でこちらも3日続落。金との連動性を取り戻し、NY朝にかけては960ドル台半ばまで反発もその後は950ドル割れへと軟調推移。長めの下ヒゲを残した翌日に十字線を形成する形となって下げ止まりを示唆するような足型も、NY金が大台維持できればこそ。水準的には5月安値から5日につけた1000ドルの大台までの23.6%戻し(951.0)を既に達成し、6日の下ヒゲでは930ドル割れも試したことから、38.2%戻し(920.1)付近までは比較的下げやすい状況にも。
ドル円は30銭ほど水準を切り上げて8月1日(107.36)以来、1カ月ぶりのドル高円安水準となって107円台を回復。クロス円全般で円安の流れが強まり、米長期金利上昇にもサポートされてドル円も値幅こそ限定的ながらも堅調に推移。週明けの東京時間には107円をはさんでの攻防が続いたものの、欧州・NY時間にかけては107円20銭台へと上昇。日曜日に発表された中国の8月貿易統計では輸入が4カ月連続減少となった上に、輸出も予想外の減少となるなど世界景気減速へのマイナス材料にも、景気刺激策への期待感も。また、何度も裏切られながらも米中協議進展への期待も根強く残り、今朝の東京時間にはトランプ大統領の「来週にも中国と協議」する?との発言も伝えられて107円30銭台へと一段高。短期上値目標108円台前半を目指す流れがゆっくりと進行中。週後半のCPI、小売売上高などが好調となればさらに一段高の展開にも。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場9/9終値とチャート
10日の国内金価格は-14円、0.25%安で3日続落。8月23日(5470)以来、2週間ぶり安値水準で6月2日以来、3カ月ぶりに21日移動平均線(5547)割れ。下値目安5500円付近に向けた調整局面がじわりと進行。ただし、円安にサポートされ、NY金も1500ドルの大台付近では下げ渋る可能性もあり、そうなれば目標未達で折リ返すことにも。それでも上値の重い状態も続き、5570円辺りが当面の上値抵抗水準候補。
プラチナ価格は+4円、0.12%の小幅高で3日ぶりの反発。中長期的には重要な節目となる3400円ライン手前で下げ渋る状態となり、急騰後の急反落へと乱高下の展開から落ち着き始めた様子も。国内価格も金価格との相関性急回復状態にあり、金価格の下落がもう少し続くようなら追随する展開にも。短期的には3380円がサポートとなり、これを下抜けた場合には3320円近辺を下値目安に一段安も。
※参考:金プラチナ国内価格9/10とチャート
- 2019年9月10日(火)時点の相場
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国内金 : 5,537 円 9/10(火) ▼14(0.25%) 国内プラチナ : 3,460 円 9/10(火) ▲4(0.12%) NY金 : 1,511.1 ドル 9/9(月) ▼4.4(0.29%) NYプラチナ : 952.7 ドル 9/9(月) ▼5.8(0.61%) ドル円 : 107.21 円 9/9(月) ▲0.29(0.27%)
世界のプラチナ需給:2019年第2四半期 9/10(火)
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