金プラチナ短期相場観
インフレ加速せず、ティラーソン国務長官解任で政治リスク拡大
更新日:2018年3月14日(水)
米労働省が発表した2月の消費者物価指数(CPI)は前月比+0.2%で1月の+0.5%からは減速、前年比では+2.2%で1月の+2.1%からは加速。コアCPIは前月比+0.2%で1月の+0.3%から失速、前年比では+1.8%となり1月から変わらず。
前年比でのCPIは昨年9月以降、+2.2%から+2.0%の間での推移が半年間続いています。コアCPIは昨年5月以降、前年比+1.7%から+1.8%の水準での横ばい推移が10カ月継続中。
2月初旬に警戒された賃金急上昇によるインフレ懸念は完全に落ち着き、かといって減速している訳でもなく、PCEを少し上回る水準を維持して加速待ち、という状況です。
内訳では、中古車価格は昨年半ばの前年比-4.0%台から-0.1%まで回復、航空運賃は1月の-5.1%からさらに低下して-5.4%。携帯電話サービスは1月までの-10%超から-9.4%へと下落率は小幅に縮小しています。ガソリンは1月の+8.5%から+12.6%へと加速、自動車保険も1月の+8.5%から+9.7%へと加速、賃貸住宅は+3.7%から+3.6%と小幅減速。
航空運賃と携帯電話サービスの下げ止まりが待たれます。
前月比でも前年比でもCPI、コアCPIいずれも市場予想どおりの結果となり市場インパクトは限定的となりましたが、またもトランプ要因によって市場に動揺が。
先日の国家経済会議(NEC)のゲーリー・コーン委員長辞任に続き、今度はティラーソン国務長官がトランプ大統領によって「解任」されました。また、これに関連してゴールドスタイン国務次官も解任されたようです。
穏健派とされたティラーソン氏に変わる国務長官の後任には、マイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官が指名されています。このボンベオ氏は対中東、中国、北朝鮮などに対して強硬派と言われます。
経済と外交トップの相次ぐ交代劇はトランプ政権の不安定さを象徴し、政権への不信感と先行不透明感から市場の警戒ムードも高まります。
インフレ加速による金利急騰懸念は後退したものの、今度は政治リスクが拡大し始めた様子です。
13日のNY金相場は0.48%の反発。時間外ロンドンタイムまでは金利上昇ドル高の流れが優勢となったことで1320ドル半ばから1320ドル割れへとゆるやかに軟調推移。NY朝の米2月CPIは事前予想取りの結果となったものの、ティラーソン国務長官解任報道を受けて1320ドル台後半へと急騰。安値では4日連続1310ドル台まで下げて1320ドル台を維持、上値は4日連続で1330ドルで蓋をされる形で小幅保ち合い。日米政治リスクが高まるなかでも次週FOMCまでは方向性の出難い状態継続か。上方向には20日移動平均(1330)と1340ドルが節目となり、超えると高値更新トライへ、下方向へは1320ドルを完全に割れると1280ドル前後までを試すような下落局面入りも。
NYプラチナ相場も0.46%の反発。ティラーソン解任報道では960ドル台前半から970ドル台へと急騰も、その後は960ドル台後半へと失速。上下の値幅は今年の平均16ドルに対してこの日も11ドルにとどまる小動きとなり、次のボラタイルな局面に向けてエネルギーを貯め込む状態。950ドルから970ドルまでの小幅レンジ内上限付近に位置しながらも上値はまだ重い状態も継続。970ドル超へと水準を切り上げることができれば上昇局面形成の流れで1000ドルの大台再トライへ、950ドルの下限割れの場合には今年安値更新トライの流れとなって下値目安は910ドル近辺まで。
ドル円は0.15%のドル高円安。東京市場朝に106円20銭台まで下げた後は日経平均の反発とともに106円台後半へと上昇。欧州時間に入ると森友問題の政権への影響は限定的とする楽観的な見方も強まって円安進行、半月ぶりのドル高円安水準となる107円20銭台へ。しかし、ティラーソン報道を受けてNY市場朝には106円70銭近辺まで急反落。107円の節目突破に失敗した形となり、今朝の東京市場では106円30銭台まで下げた後、60銭台へと持ち直しの様相も。ただしインフレ加速は今回も確認出来ず、ドル高円安方向への流れも失速気味。下値は106円台が徐々に堅くなりつつあり、あらためて107円台へと水準を切り上げることができれば108円トライの展開にも。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場3/13終値とチャート
14日の国内金価格は0.29%の反発。半月かけて形成した三角保ち合いもそろそろ頂点付近となってブレイク待ちへ。流れとしては上方向優勢の状態も、日米政治リスクや通商問題、FOMCでのタカ派見通しへの警戒感なども交錯する状況にあり、上下双方向に可能性。上方向4870円超へと抜け出せば上値目標は4960円前後まで。下方向4850円割れなら大幅安の展開も予想され、当面の下値目安は昨年7月安値圏となる4750円前後まで。
プラチナ価格は0.31%の反発。反発局面一服で保ち合い形成の様相となり、次のトレンドは金に委ねる形で追随の展開へ。上方向へ3560円突破なら反発基調再開で次の上値目安は3620円近辺。下方向に3530円台を割り込むようなら再反落で安値更新トライ、当面の下値目安は3460円台辺りまで。
※参考:金プラチナ国内価格3/14とチャート
- 2018年3月14日(水)時点の相場
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国内金 : 4,865 円 3/14(水) ▲14(0.29%) 国内プラチナ : 3,550 円 3/14(水) ▲11(0.31%) NY金 : 1,327.1 ドル 3/13(火) ▲6.3(0.48%) NYプラチナ : 967.3 ドル 3/13(火) ▲4.4(0.46%) ドル円 : 106.57 円 3/13(火) ▲0.16(0.15%)
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