金プラチナ短期相場観
賃金上昇率急低下とゼロ賃金の割合急増
更新日:2021年6月15日(火)
米労働省が発表した5月の雇用統計では、平均時給の上昇率は前年比+2.0%となっていました。2020年2月までの前年比+3.0%前後の推移から、4月には8%を超え、それ以降は5-6%での推移が続き、今年4月には前年比+0.4%と乱高下状態が続きます。
これを3ヵ月平均で見ると、コロナ前の3%台前半から2020年6月の6.6%がピークとなり、以降4-5%での推移を経て今年4月には3.3%、5月には前年比+2.2%となり、2015年9月以来、5年8ヵ月ぶりの低水準となりました。
個人時給の中央値の前年比3ヵ月平均で示される、アトランタ連銀発表の賃金上昇トラッカーでは、5月は前年比+3.0%。コロナ後は2020年7月の前年比+3.9%がピークとなり、その後は3.5%を挟んでの揉み合い推移を経て今年4月には3.2%。ここに来て急速に低下し、5月の3.0%は2018年2月(2.9)以来、3年3ヵ月ぶりの低水準となっています。
賃金上昇率が+0.5%から-0.5%の範囲内にとどまるゼロ賃金の割合は、5月には14.6%となり、昨年10月(14.7)以来7ヵ月ぶりの高水準となっています。そして、3月の13.5%から4月の13.9%を経て急騰局面を形成しています。
過去のリセッション時期においては、賃金上昇率の急低下とともにゼロ賃金の割合が急増する逆相関の関係が顕著となり、回復期には逆行する形となってきました。
今回は、やや揉み合い状態となって従来の危機時とは異なる展開となっているようにも見えましたが、ここに来て賃金上昇率が明確に低下し始め、ゼロ賃金の割合も増加の兆しとなってきたようです。
これが一時的でなければ、労働市場の歪が解消し始めてようやく従来のような悪化状態が明確化し始めている可能性もありそうです。
14日のNY金相場は-13.7ドル、0.73%の続落で5月14日(1838.1)以来、1ヵ月ぶりの安値。週明け時間外は1880ドルで上値を押さえられると週末からの軟調局面再開、FOMCへの警戒感からのポジション調整が進行した様子も。1870ドルの節目を早々に割れるとロンドン時間には1860ドル割れ、米10年債利回りが1.5%付近へと上昇したNY朝には1845.7ドルまで下落。高値保ち合い下限1870ドル割れに伴う短期下値目安1840ドル台にしっかり到達したことから、200日移動平均線(1844.7)にもサポートされる形となって急速に買い戻され、1860ドル台を回復。想定されたFOMC後の反応を前倒ししてしまった格好にも。目先は再度1840ドル台の下値目安まで再トライの可能性も残しながら、1900ドルの上限までを主要レンジに1880ドルに抵抗感も。
NYプラチナは+14.2ドル、1.23%の続伸で6月7日(1174.8)以来、1週間ぶりの高値。先週後半に短期下値目安1140ドル近辺到達後、若干の行き過ぎからの反発も限定的となっていた状態から、週明け時間外に再度1140ドルまで下げてようやく吹っ切れた様子も。ロンドン時間から金に逆行する形となって反発基調が強まるとNY朝には1170ドル台まで、30ドル超の急騰。引けにかけても1160ドル台半ばを維持し、少なくともいったんは下げ止まりを確認する形にもなり、反発方向への可能性も意識される状態にも。目先は下落基調の20日移動平均線(1182.6)が降りてくる1180ドルが抵抗水準となり、これを上抜けると一段高の展開へ、1200ドルの大台トライが目標に。当面の下値サポートとなる1140ドル台を再度割り込むようなら先週安値1120ドル台を再度試しに行く展開にも。
ドル円は41銭のドル高円安、0.37%の続伸で6月3日(110.31)以来、10日ぶりの高値。東京朝には日経平均の堅調推移と米10年債利回りの小幅上昇にも連れて先週末高値109円80銭台まで上昇して失速。午後から欧州序盤にかけてはジリ安の展開となって元の水準109円60銭台まで下落。欧州時間からNY朝にかけては米10年債利回りが1.5%手前まで上昇した流れにも連れて堅調推移、先週末とこの日の東京市場での高値109円80銭台を超えると一段高、110円ラインでの若干の攻防を経て110円台へと上昇。一時110円10銭近辺まで上昇し、110円台を維持。109円70銭の節目を上抜けたことからドル高円安方向への流れが進行しやすい状況に。FOMCでタカ派寄りの見通しが示されるなどのきっかけがあれば上値トライへ、今年高値圏110円70銭近辺までが短期上値目標に。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場6/14終値とチャート
15日の国内金価格は-10円、0.14%の続落。5月25日(7146)以来、3週間ぶり安値。7240円台の節目割れと三角保ち合い下放れに伴う短期下値目安7170円近辺までもう少し。過去20日間の高値と安値の中央値を下回った状態が続き、FOMCへの警戒感も考慮するともう一段の下落も。5月末の押し目形成水準7140円台、今年3月安値から6月高値までの23.6%戻し(7117)などがもう一段の下値警戒水準にも。
プラチナ価格は+75円、1.7%高となって5日ぶりの反発。6月8日(4497)以来、1週間ぶりの高値。短期下値目安4400円前後に到達し、オシレータ系指標のダイバージェンスが示唆したとおりの展開となり、まずは9日移動平均線(4465)を上抜けて上方向への節目4500円も視野に。これを上抜けると21日移動平均線(4522)や90日移動平均線(4524)などをまとめて上抜けて地合い好転、4560円程度までが次の上値目標にも。ただしFOMC後の波乱などから急反落となって4390円台の節目を割り込むようだと一段安へ、4320円近辺までが下値目安に。
※参考:金プラチナ国内価格6/15とチャート
- 2021年6月15日(火)時点の相場
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国内金 : 7,186 円 6/15(火) ▼10(0.14%) 国内プラチナ : 4,474 円 6/15(火) ▲75(1.70%) NY金 : 1,865.9 ドル 6/14(月) ▼13.7(0.73%) NYプラチナ : 1,165.3 ドル 6/14(月) ▲14.2(1.23%) ドル円 : 110.07 円 6/14(月) ▲0.41(0.37%)
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