金プラチナ短期相場観
世界のプラチナ需給-2023年第1四半期
更新日:2023年5月17日(水)
WPIC(World Platinum Investment Council)発表のプラチナ需給レポートによれば、2023年第1四半期のプラチナ総需要は62.4トン。前期比+18.6%、前年同期比では+28.1%となって7四半期ぶりの高水準。自動車触媒需要が増加し、投資需要は買い越しへと転換。
総供給量は50.2トンで前期比-8.2%、前年同期比-8.6%で2年3四半期ぶりの低水準。需給バランスは12.2トンの供給不足。供給不足は7四半期ぶり。
※2023年通年見通しでは、総供給量は223.7トン。前年比-0.9%で2年連続減。総需要は254.3トン。2013年以降では最少となった2022年から+27.7%。需給バランスは30.6トンの供給不足。供給不足は3年ぶり。
地上在庫は2022年の148.5トンから2023年には117.9トンへ、-20.6%と減少見込み。
<供給>
■鉱山産出量:37.4トン 前期比-11.2%、前年比-7.5%、2年3四半期ぶりの低水準。うち南アフリカは23.6トン(前期比-18.5%、前年比-13.6%)で2年3四半期ぶり低水準。電力不足が影響。ロシアは5.6トン(前期比+12.5%、前年比+10.4%)。2カ国合計シェアは79.7%となり、2年3四半期ぶり低水準。
※2023年通年見通しでは171.4トン。2022年の173.1トンから-1.0%。
■リサイクル:12.8トン 前期比+1.2%、前年比-11.9%。※2023年通年見通しでは52.3トン、2022年の52.6トンから-0.5%の小幅減で2013年以降では最低となる見込み。
<需要>
■自動車触媒:25.1トン 前期比+6.5%、前年比+9.4%、4年3四半期ぶり高水準。
※2023年通年見通しは101.2トン、2022年の90.1トンからは+12.4%で6年ぶり高水準。パラジウム代替需要拡大による押し上げ見込み。
■宝飾品:14.2トン 前期比-0.4%、前年比-2.4%、2年半ぶり低水準となった前期からほぼ変わらず。
※2023年通年見通しは57.9トン、2022年の59.1トンからは-2.0%で3年ぶり低水準。
■産業用:17.7トン 前期比+7.3%、前年比+8.2%。3四半期ぶり高水準。
※2023年通年見通しは81.7トン、2022年の69.8トンからは+17.1%、2013年以降で最大。ガラス関連が22.7トンで過去最大見込み。
■投資:+5.4トン 7四半期ぶりの買い越し。現物投資需要は3.17トンで前期比100倍、前年比+72.9%。6四半期ぶり高水準。
※2023年通年見通しは+13.5トン、3年ぶりの買い越し。ETF関連が3年ぶりに+0.9トンへと買い越し、現物投資は12.5トンで3年ぶり高水準。
★2023年通年見通しでの需要全体における自動車触媒需要の占める割合は39.8%。過去最大となった2022年の45.3%から2年ぶり低水準へと縮小。宝飾品は22.8%で2022年の29.7%から縮小、過去最低へ。産業用32.1%で2022年の35.1%からは縮小。投資は5.3%。
<価格と消費需要・ETF需要>
宝飾品需要と現物投資需要を合わせたプラチナ消費需要は17.3トン。前期比+21.6%、前年比+6.1%。2015年以降では最低となった前期からは反発し、2四半期ぶり高水準。前年比プラスは4四半期ぶり。
NYプラチナの第1四半期平均価格は997.9ドル。前四半期平均の978.8ドルからは小幅上昇で2四半期続伸、1年ぶり高値。ETFの売り越し幅縮小から買い転換に連れての上昇。
※消費需要の2023年通年見通しは70.4トン。2013年以降では最低となった2022年の66.1トンからは+6.6%、2年ぶり高水準。
16日のNY金は-29.7ドル、1.47%の大幅反落で5月1日(1992.2)以来、2週間ぶり安値となって大台割れ。下げ幅としては今年の絶対値平均14.2ドルの2.1倍、今年7番めの大幅安。時間外序盤の2020ドル近辺での小幅保ち合いからアジア時間に2010ドル付近へと水準を切り下げ、ロンドン・NY朝にかけては2010ドル台前半での保ち合い推移。米4月小売売上高が市場予想を下回ると小幅に急騰も2020ドル付近まで、その後は4月鉱工業生産が予想を上回り、5月NAHB住宅市場指数も好結果となり、巻き戻しの展開が加速。米長期金利上昇とドル高の流れを受けて2000ドルの大台近辺へと急落後も下げ止まらず、NY午後には一時1990ドル割れ。クリーブランド連銀メスター総裁の「利上げ継続が次回会合での選択肢の一つ」、リッチモンド連銀バーキン総裁の「必要ならさらなる利上げも辞さない」など複数のFRB高官によるタカ派発言が相次いだことも下押し圧力に。2020ドルの節目割れに伴う短期下値目安2000ドル前後に到達して若干のオーバーランからNY引け後には1990ドル台半ばへ。短期的には調整一服感も、短中期的には1980ドル近辺から2060ドル近辺までのレンジでダブルトップを形成し、ネックライン割れの攻防状態にもあり、もう少し崩れるようだと1900ドルの大台付近まで、大幅調整へと向かう可能性も。
NYプラチナは-7.8ドル、0.73%の反落。1070ドルを挟んでの小幅保ち合い推移に終始。アジア時間でつけた安値でも1060ドル割れを回避して概ね1060ドル半ばが下限となり、ロンドン・NY市場での高値も1080ドル手前で何度も上値を押さえられる展開に。この日の変動値幅16.9ドルは今年の平均30.3ドルの半分強、今年3番めの小動き。目先、1060ドル台のサポートを維持できなくなれば2月末安値(903.9)から4月高値(1148.9)の半値戻し(1026.4)近辺を目安に下値トライへ。1080ドルに切り下げた上限突破へと切り返すことができれば上値トライ再開、1120ドル台辺りまでが短期上値目標に。
ドル円は30銭のドル高円安、0.22%高で4日続伸。5月2日(136.58)以来、半月ぶり高値圏での堅調推移。136円を挟んでの小幅揉み合い推移で東京市場を通過すると欧州時間には135円60銭台まで軟調推移。前日安値圏で下げ渋るとNY朝にかけては136円付近へと持ち直し、米4月小売売上高が市場予想を下回ると急落で反応も、またしても135円60銭台までで切り返し、136円台回復後も4月鉱工業生産の好結果や住宅市場指数の回復基調が確認されて一段高。FRB関係者のタカ派発言などにもサポートされてNY午後には136円60銭台まで上昇。135円30銭の節目上抜けに伴う短期上値目標137円台を目指す流れが継続。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場5/16終値とチャート
17日の国内金価格は-85円、0.88%安で3日ぶりの反落。ハト派転換し切れないFRBへの警戒感が意識された格好にもなり、失速感に耐えてきたNY金が下げ渋り切れずに大台割れとなって下押し圧力に。高値保ち合い上限を切り下げ、強気相場をサポートしてきた9日移動平均線(9591)も大きく割り込む状態に。9530円の節目を割れると一段安へ、短期下値目安は4月末安値(9341)から5月最高値までの61.8%戻し(9470)近辺。9640円の節目上抜けへと切り返すことができれば9700円台へ、最高値更新再トライも。
プラチナ価格は+12円、0.24%の続伸。4980円の節目割れを回避しての反発局面を維持し、上昇軌道の21日移動平均線(5039)にもサポートされ、ほぼ水平状態の9日移動平均線(5069)も視野に。地合い回復に向けては9日線の早期上抜けは必須に。4980円の節目を維持できなくなれば大幅調整へも、3月安値(4407)から5月高値(5197)の38.2%戻し(4895)近辺が下値目安に。
※参考:金プラチナ国内価格5/17とチャート
- 2023年5月17日(水)時点の相場
-
国内金 : 9,553 円 5/17(水) ▼85(0.88%) 国内プラチナ : 5,043 円 5/17(水) ▲12(0.24%) NY金 : 1,993.0 ドル 5/16(火) ▼29.7(1.47%) NYプラチナ : 1,066.9 ドル 5/16(火) ▼7.8(0.73%) ドル円 : 136.40 円 5/16(火) ▲0.30(0.22%)
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