金プラチナ短期相場観
雇用指標の歪み~長期失業者の割合は歴史的低水準
更新日:2020年7月3日(金)
この春、3月から4月にかけて突如2200万人超の雇用が吹き飛んだ米雇用市場。5月から6月にかけての2ヵ月では合計750万人程の雇用が回復。約3分の1程度の失業者が復帰することになり、失業率も過去最大となった4月の14.7%から6月は11.1%まで低下。コロナ前の最大だった1982年11-12月の10.8%に近いレベルとなり、6月雇用統計は雇用市場の回復基調が急速に進行し始めていることを確認する結果となりました。
そんななか、雇用指標の中には実体が正確に示されない、歪んでしまった指標もあるようです。
失業状態が半年を超える「長期失業者の割合」はこれまで、リセッションとともに急拡大の兆しとなり、景気回復とともにピークアウトし、好景気が続けば低下し続ける指標、でした。
世界金融危機からの回復局面では、2011年から2012年にかけて40%台でピークアウトして低下基調がスタートし、景気拡大局面の長期化とともに「長期失業者の割合」の低下基調も続きました。2018-2019年にかけては20%付近で下げ渋る状態となり、ボトムアウトと景気拡大局面の終焉が警戒されました。
そして迎えた2020年春、コロナショックでリセッション入り。「長期失業者の割合」は3月の15.9%から4月に4.1%へと急落。1953年12月(4.0)以来、実に66年4ヵ月ぶりの低水準を記録しました。
5月には5.6%、6月は7.9%へと上昇しています。
これまで過去の展開では、景気の悪化が続いて失業者も増え続け、長期失業者の割合も増加傾向が続くというパターンが繰り返されてきましたが、今回はあまりにも短期間で失業者が急増してしまったことで、「短期失業者の割合」が急拡大。「長期失業者の割合」が割を食って急減となっています。
足下での回復基調スタートに伴い、「短期失業者」が急減しつつあることから、「長期失業者の割合」も回復。
ただし、この春に「短期失業者」となった人たちは、早期復帰できる人ばかりではなく、確実に100%未満であることから、何割かの人達は「長期失業者」に転じることになります。
4月に失業した人達のうち、半年を超えて10月以降も失業していた場合には「長期失業者」となっていきます。
つまり秋以降、この「長期失業者」の割合は急騰していく可能性を秘めています。
現状では実体を把握し切れない、歪んでしまった雇用指標の今後の動向も、注目されます。
2日のNY金相場は+10.1ドル、0.57%の反発。およそ20ドルの上下動となった2日間で1800ドルの高値を2度試し、翌日は半値戻しとなって高値保ち合いを維持。この日の報道で、米国内の新型コロナウイルスの新規感染者数が7月1日時点で初めて5万人を突破。6月に1度5万件を突破も足下では4万件前後で推移するブラジルを再び米国が逆転。増加率では2.1%となって5月9日以来最大。フロリダ州では増加率6.4%となって過去最大、入院者数も過去最大の増加となって死者数の増加も1ヵ月で最大。テキサス州では月半ばまでに臨時ベッドの追加が必要見込みとなり、マスク着用を義務付け。感染再拡大への警戒感から、雇用統計後の株高の流れは巻き戻し。ナスダックは連日の最高値更新も、ダウは前日比プラスながらも上ヒゲ陰線となって頭打ち感も。雇用統計発表前までに1780ドル半ばまでジリ高推移となっていたNY金は、指標発表後に1770ドル割れへと急落で反応。しかし1770ドルのサポート水準割れでは底堅く、前日と同様に反発の展開、米株の反落にもサポートされる格好でNY午後までに1790ドルを回復。1770ドルから1800ドルまでの高値保ち合い状態で3連休入り。次週、保ち合い上抜けで高値再更新となれば上値目標は1830ドル。反落の展開となって保ち合い下限を維持できなくなった場合には、6月後半急騰前の保ち合い高値圏1740ドル台までが下値目安に。
週間ベースでは+9.7ドル、0.54%高で4週続伸。4週続伸以上は1月末以来、5ヵ月ぶり。
NYプラチナは-2.8ドル、0.34%の小幅続落。欧州時間には840ドル台半ばまで小反発も一時的にとどまり、NY朝の雇用統計発表後には金に追随する展開となって830ドル割れへと急反落。直後の反発局面にも追随も、830ドル台半ばでは上値も重く、830ドル割れへと再反落、NY午後には830ドル付近に収束。レンジを拡大する逆ペナント型の三角保ち合いのレンジ中央付近に落ち着いた状態に。800ドルから850ドル台まで拡大した保ち合いレンジの上限を次週、上抜けできれば上値目標は6月高値圏910ドル。下抜けとなった場合の下値目安は4月後半安値圏750ドル。
週間ベースでは+12.3ドル、1.5%の反発。
ドル円は6銭程度の小幅反発、107円台半ばでほぼ横ばい推移。107円30銭台から50銭台まで、ほぼ20銭のレンジでの保ち合い推移となって東京・欧州時間をやり過ごし、米6月雇用統計の好結果を受けて107円70銭台まで急騰。しかし0.67%台から0.7%台へと急騰した米10年債利回りの失速、急反落の展開にも連れて107円40銭台へと急反落。米国内でのコロナ感染再拡大懸念から米株が軟調推移となったことも上値の重石となり、もみ合いながら107円台半ばへと収束。106円台半ばから108円までの保ち合いレンジのなかで、107円付近が下値サポートにもなりつつあり、20日移動平均線(107.41)をはさむ形での横ばい推移状態にも。当面のレンジ拡大余地としては、上方向には109円付近まで、下方向には105円付近まで。
※参考:金プラチナ相場とドル円 NY市場7/2終値とチャート
3日の国内金価格は+38円、0.57%の反発。雇用統計の回復基調をコロナ感染再拡大懸念が相殺する形となって下支え。いずれはコロナ終息に伴い、雇用統計等の回復基調が続く時期を迎えることにもなり、金価格の大幅調整フェーズが待ち構えることにも。ただし、その前に雇用統計の回復基調自体を感染再拡大が阻害する場面が訪れる可能性もあり、とりあえずは近々に大幅調整局面が訪れる可能性は低そう。過去最高値圏での小幅保ち合いを形成し、6660円の下値サポートを割れた場合には調整幅拡大、下値目安は6月安値(6473)から最高値(6734)までの半値戻し(6604)近辺、6600円前後まで。高値再更新なら上値目標は5月高値(6603)から5月末安値(6428)までの200%戻し(6778)近辺、6780円前後。
週間ベースでは+77円、1.16%の続伸。
プラチナ価格は-18円、0.58%の続落。やはり、というか誰もが予想したとおりNYプラチナが再度上値トライへと向かうことはなく、国内価格もレンジを拡大する逆ペナント型の三角保ち合い形成をあらためて確認する動きに。ただし、この形状がいつまでも続くこともありえず、特に現状水準から上方向に切り返して3100円超へとレンジ再ブレイクとなれば、これまでとは流れが変わり始めた兆しにもなり、上値トライへと向かう可能性も若干程度高まることにも。その場合には6月高値3220円前後までが上値目標に。このまま3010円を下回った場合には、これまでのレンジ拡大の動きか、レンジ下方ブレイクかの両睨み。下方ブレイクなら下値目安は3月安値(2422)から5月高値(3227)までの38.2%戻し(2919)近辺、2910円台。
週間ベースでは+53円、1.76%高で4週ぶりの反発。
※参考:金プラチナ国内価格7/3とチャート
- 2020年7月3日(金)時点の相場
-
国内金 : 6,699 円 7/3(金) ▲38(0.57%) 国内プラチナ : 3,072 円 7/3(金) ▼18(0.58%) NY金 : 1,790.0 ドル 7/2(木) ▲10.1(0.57%) NYプラチナ : 831.6 ドル 7/2(木) ▼2.8(0.34%) ドル円 : 107.50 円 7/2(木) ▲0.06(0.06%)
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